【動画】コンプレッション、アタックタイム・リリースタイム

本動画では、認定補聴器技能者試験の過去問を題材に、デジタル補聴器の基本技術である**コンプレッション(圧縮)**、特にWDRC(ワイドダイナミックレンジコンプレッション)の概念と、出力制限装置におけるアタックタイムおよびリリースタイムについて考察しています [1-3]。

WDRC(ワイドダイナミックレンジコンプレッション)とは

WDRCは「ワイドダイナミックレンジコンプレッション」の略であり、ダイナミックレンジ(可聴域)を幅広く圧縮する方式です [1]。

  • 難聴、特に感音性難聴の場合、小さい音は聞こえず、大きい音はよりうるさく感じるため、ダイナミックレンジが狭くなります [1, 4]。
  • WDRCは、この狭くなった聴覚の範囲に音を収めるために圧縮(コンプレッション)を行う方式であり、現在のデジタル補聴器のほとんどがこの増幅方式を基本として採用しています [2]。
  • このコンプレッションの考え方は、難聴によって機能が弱った**外有毛細胞**が本来行っていた、「小さい音の増幅と大きい音の抑制」という役割を再現しようとする試みに関連しています [4, 5]。

ニーポイントの設定とメリット・デメリット

ニーポイントとは、利得が最大の状態からコンプレッション(圧縮)がかかる状態に切り替わるポイントを指します [6]。

試験問題では、このニーポイントを40dBなどの**低い入力レベルに設定する**ことのメリットとデメリットについて考察されています [1, 6]。

設定を低くした場合のメリット

  • **小さい音の聞き取りが良くなります** [6]。
  • 結果として、多くの人の声や物音などの聞き取りが良くなると考えられます [6]。

設定を低くした場合のデメリット

  • **ハウリング(耳鳴り)のリスクが高くなります** [6, 7]。非常に小さい音が入った際に利得が大きくなりすぎることで、ハウリングが発生しやすくなります [7]。
  • 生活騒音やカシャカシャといった**細かい雑音**が必要以上に大きく入ってきて、気になる可能性があります [6, 8]。

なお、ニーポイントは、補聴器調整において直接触ることは稀ですが、設定された利得の値に応じて自動的に変わることが多いです [4, 6]。また、補聴器によっては、小さい音をさらに抑制する**エクスパンション**(圧縮の反対)をかけることで、細かい雑音対策を行う場合もあります [8, 9]。

出力制限装置のアタックタイムとリリースタイム

強い音から耳を保護するために設けられる**出力制限装置**には、「アタックタイム」と「リリースタイム」が関係します [3, 5]。

アタックタイム

  • **定義:** 強い音(出力制限レベルを超える音)が入力されてから、補聴器が音を抑え込むまでの時間です [3, 5]。
  • **設定:** 出力制限に関するアタックタイムは、耳を痛める危険性を減らすため、**極力短く設定すべき**です [3]。設定が遅いと、強大音が瞬間的に耳に入ってしまいます [3]。
  • **注意点:** ただし、出力制限レベルではない通常のコンプレッション(WDRC)がかかっている範囲のアタックタイムについては、あまりに早いと音楽などの抑揚がなくなり、不自然に聞こえる場合があるため、難しい判断が必要とされます [10]。

リリースタイム

  • **定義:** 音が小さくなった後、利得が元に戻るまでの時間です [3]。
  • **設定:** リリースタイムは、アタックタイムと比較して**若干ゆっくり目**に設定されることが多いです [3]。これは、音が急に戻ると不自然に聞こえるのを避けるためです [3]。
お問い合わせ
お問い合わせ