認定補聴器技能者試験問題の解説:耳の構造と有毛細胞の働き
今回は、認定補聴器技能者試験の過去問を題材に、耳の解剖・生理・病理に関する問題について解説します [1]。この問題は難易度が高いですが、特に外有毛細胞(OHC)の重要な機能を理解することが鍵となります [1, 2]。
有毛細胞の役割:振動の「修飾」と増幅
試験問題の正答は以下の選択肢でした [1]:
外有毛細胞は蝸牛規定版の振動を修飾している
「修飾」とは、表現を広げたり、他の部分の内容を詳しく説明したりする(形容詞のような働き)ことと解釈されます [3]。
蝸牛の内部には、音を感じる役割を持つ有毛細胞が存在します [2]。
- 内有毛細胞(IHC): 2列あり、主に音を感じ取って神経線維を通じて信号を送る役割を担っています [2]。
- 外有毛細胞(OHC): 3列あり、音の信号を送る内容有毛細胞とは異なる働きを持ちます [2, 4]。
外有毛細胞(OHC)の具体的な機能
外有毛細胞は、音の知覚において非常に重要な役割を果たしています [4]。
- 音の増幅: 小さい音が入ってきた際、そのままでは感じにくいため、OHCが動いて音を増幅させます。これにより、非常に小さな音も感じ取ることができます [2, 4]。ただし、音が大きくなるとその働きは弱まります(サボり始める) [4, 5]。
- 周波数分解能の鋭化: 蝸牛規定版の特定の周波数帯だけを鋭く振動させるように作用します [4]。これにより、周囲の周波数帯の動きを抑制し、音がぼやけずに明瞭に聞き分けられるようになります [4, 6]。
もし外有毛細胞が傷つくと、この周波数分解能が低下し(ぼやっとして)、音の判別が難しくなります [5, 6]。
不正解となった選択肢の解説
耳の構造と病理に関する残りの選択肢は、以下の理由により誤りとなります [1, 5, 7]。
1. 補充現象(リクルートメント)について(選択肢2)
選択肢2は「聴神経が減少すると補充現象が陽性になる」というものでしたが、これは誤りです [1, 5]。
補充現象とは、感音性難聴において、小さい音が聞こえにくいにもかかわらず、ある一定の大きさ以上の音に対しては過剰に大きく感じてしまう現象です [5]。これは主に、音の大小に応じて増幅・抑制を行う外有毛細胞が痛むことが主な要因とされています [5]。聴神経の減少とは直接的な関係はないと考えられています [5]。
2. 外耳道共鳴周波数(選択肢4)
外耳道に音が入ってくる際に共鳴現象が起こりますが、その周波数を決定するのは外耳道の長さであり、太さではありません [1, 7]。外耳道共鳴はおおよそ3kHz程度の周波数で起こります [7]。
3. 耳小骨(選択肢3)
耳小骨のうち、鼓膜と接着しているのはツチ骨(土骨)であり、アブミ骨(アミ骨)は一番奥に位置しています [1, 7]。
まとめ
外有毛細胞は音の増幅と周波数分解能の鋭化という二つの重要な働きを通じて、私たちが音を鮮明に聞き取る能力を支えています。この機能の低下が、難聴における聞き取りにくさ(周波数分解能の低下)や補充現象といった症状に繋がることを理解しておく必要があります [4-6]。





























